黒塗りの大型リムジンが入ってきたので給油した。
そのあとで事務所にもどったとき、ソクラテスに「われわれ貧乏人」より金持ちのほうが幸福だと思うかどうかをたずねてみた。
かれの返事は、いつもながら、ぼくを驚かせた。
「わしは貧しくないぞ、ダン。
わしは大金持ちだ。
実際のところ、豊かでなくちゃ幸福になれんからな」
かれはぽかんとしているぼくの顔を見てほほえむと、机の引き出しからペンをとりだして、白い袋に大きな字で書きはじめた。
満 足
幸 福 = ——
欲 望
「もし、おまえが自分の欲望を満足させるにじゅうぶんな金を持っていれば、ダン、おまえは金持ちだ。
ところが、金持ちになるにはふたつの方法がある。
ぜいたくな欲望に見合うだけの金を稼ぐか、相続するか、借りるか、喜捨(きしゃ)を受けるか、盗むかする方法がひとつ。
もうひとつは、欲望の少ない質素な生き方を身につける方法だ。
それが身につけば、金はいつもあり余るほどあることになる・・・・・・・」
「後者の方法を完全に身につけるだけの見識と素養を持っているのが戦士なんだ。
一瞬、一瞬に全力で注意を集中することがわしの欲望であり、喜びなんだが、ありがたいことに、注意には金がかからんのだよ。
トレーニングという投資をするだけでいい。
戦士のもうひとつの利点はな、ダン、安あがりだということさ!
いいかね。
幸福になる秘訣は、より多くをもとめることにではなく、より少ないもので楽しめる能力を磨くことにあるんだぞ」
かれのことばを聞きながら、ぼくは自分が満ち足りた気持ちになっていくのを感じた。
「癒やしの旅/ピースフル・ウォーリアー」 ダン・ミルマン著 抜粋
